注意事項

※素人の戯言なので観賞本数増えるごとに点数は微調しています。悪しからず。

2016年4月16日土曜日

映画『ルーム』93点




2016年4月16日観賞。


ここ最近で観た映画の中で間違いなくベスト。


施錠された狭い部屋に暮らす
5歳の男の子ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)と、
母親ジョイ(ブリー・ラーソン)。
彼女はオールド・ニック(ショーン・ブリジャース)によって
7年間も監禁されており、そこで生まれ育った息子にとっては、
小さな部屋こそが世界の全てだった。
ある日ジョイは、オールド・ニックとの言い争いをきっかけに、
この密室しか知らないジャックに外の世界を教えるため、
そして自身の奪われた人生を取り戻すため、部屋からの脱出を決心する。

このあらすじを読んだだけで憂鬱な展開は想像にたやすいが、
あらすじだけでなく、この映画の完成度&表現力の高さによって、
映画の最初から最後まで胸を締め付けられるような気持ちが続く。
母子共に圧倒的な演技力!!














まずこの映画の特徴は、「脱出」が映画のメインでは無く、
前半:「脱出」、後半:「犯罪被害者のその後」という構成だと言うこと。


なので、「悪夢と絶望の日々から脱出した!良かった-!幸せな日々が!」
という在り来たりなフィクション的な展開で終わらせてくれない。


そりゃそうだ。現実はそんなに甘いわけが無く、
監禁部屋しか「世界」を知らない5歳のジャックは、
せっかく脱出できたのに「部屋に戻りたい」と言い出すのだ。
天才子役。お願いだからマコーレカルキンみたいにはならないで欲しい。

















この映画のもう一つの特徴でもあるのが、
終始ジャックの目線で描かれていること。

これは彼の演技力無くして全く成立しない演出だが、
表情、声色、動き、全てが圧倒的にリアルで完成度が高いので
大人の僕らも気がつくと5歳のジャックと同じ目線で
映画の中に入り込んでしまう。
子持ちの親が見たら発狂してしまうんじゃないかってくらい。
この「空」を見た瞬間の表情は完璧すぎて鳥肌止まらず。














そして何よりも個人的に涙腺を刺激されたのはラストシーンだ。

それは母親と死にものぐるいで「部屋」から脱出できたのに、
「部屋に帰りたい」と言い続けるジャックが、
母親と共に様々な困難を乗り越えながらも、
最後に取り壊し寸前の「部屋」を訪れるシーンだ。

そこでジャックは、「部屋」に残された自分が慣れ親しんだ家具に触れ、
「こんなに小さかったっけ?」と言う。

そして、そのあと、一つ一つに丁寧に「サヨナラ」と言う。
というか、彼は少しだけ大人になり、成長したからこそ、
あの時大きく見えていた「部屋」の家具が「小さく」見え、
そして彼はあの頃のトラウマを少しずつ払拭できる強さを持ったから、
「サヨナラ」と「言えた」のだ。

あれだけ「戻りたい」と言っていた「部屋」を構成する一つ一つに
「サヨナラ」を告げることが出来たのだ。自分の言葉で。


そして全てに別れを告げたあと、
母親と共に部屋を出るあのカメラワーク。
鳥肌が止まらなかった。

そこに希望の匂いが、かすかに感じられるからこそ、
この映画は絶望では終わらないのだ。



2016年2月20日土曜日

映画『オデッセイ』90点

2016年2月14日鑑賞。


思ってた以上に最高だった。
巨匠リドリー・スコットが78歳を迎えてまた一つ素晴らしい作品を完成させた。

話としては『ゼロ・グラビティ』的で、
火星探査チームの一人、マッド・デイモン演じるマーク・ワトニーが
任務中の天候不良によって火星に一人取り残される。















・残りの食料は1ヶ月分

・次に宇宙船が火星に来るのは4年後

という『ゼロ・グラビティ』のサンドラ・ブロックも頭を抱える程の絶望的状況。


こんな絶望的状況からどんな展開を予想するだろうか?
普通に考えると

まずテンパって、イラついて、絶望して、少しだけ光が射して、
と思ったらまた絶望して、それでも家族のために・・・
なんてことが渦巻きながら、極限状態の中で人間のありとあらゆる本質が・・・

みたいなドロドロ感満載の高カロリー映画を予想している自分がいた。


ところがどうだ。


映画開始数分で絶望的状況に追い込まれるマッド・デイモンは、
残りの140分弱、火星という地球から数億キロも離れた惑星に
取り残されているにもかかわらず、ずっと“ポジティブ”なのだ。
ポスターに使われているこの顔もよく見たら余裕すら感じる。
ジャガイモ作るビニールハウスを完成させて雄叫び!






























劇中に流れる音楽も含めて全てがポジティブ。
一人でカメラ目線で小粋なジョークすら口にし、
絶望的状況を前に、どんなときでも挑戦的、時に挑発すらするのだ。
「火星よ、俺の能力、舐めるなよ!!」と。

TOKIO顔負けのサバイバル能力。なんと火星でジャガイモ繁殖。














序盤からあまりにもポジティブすぎて、スリルが足りなさすぎないか?と
見ていて不安だったが、あるところからそのポジティブさが心地よくなってくる。

それはなぜかというと、我々が生きる現実世界においても
当たり前と言えば当たり前なのだが、
絶対的不利な状況、絶望的状況、窮地を打破・打開するのは、
結局“知識”と“アウトプット”と“ポジティブさ”と、
少しの“ユーモア=余裕”なのだ。
彼の専門は植物学者。ていうか宇宙飛行士って能力半端ない。














だから、どうひっくり返っても火星で芋作れない俺はまだまだです。


そして、この映画は誰も死なない。
こういう類いの映画で誰も死なないって言うのは、かなり勇気のいる展開で、
フィクションにおける「死」は、良くも悪くもスリルと感情移入を生む。
でも78歳の大先生はそんなものには頼らない。


むしろ一見少し恥ずかしくなるような「仲間」の熱い絆や
自分たちの命の危険を去らしてでも彼を助けると決めた仲間達。













現実世界ではあり得そうも無い中国の協力や、
全世界がマッド・デイモンの生還を祈る構図など、
とにかく映画全体がポジティブで前向きに進行する。
で、そのまま気持ち良くフィニッシュするので、とにかく気持ちが良い。


個人的には『ゼロ・ダーク・サーティー』の時と変わらず
常に正しく、冷静でクールなジェシカ・チャステインも最高だった。


















世知辛さ満載で、殺伐とした世の中に正面切って全力で逆走する
スーパーポジティブ映画、皆さんも是非劇場で。



2016年2月17日水曜日

映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』採点不能


時代の流れに取り残されてはいけない!ということで観ました。

が、私にはこの映画を評価する資格がありません。
っていうくらい、

巷の人達がワクワクして、興奮して、批判したり、絶賛する、
そんな土俵には決して上がれない程の知識ってことを
観賞し始めてから気がつきました。

さらに良くなかったのが、うちの親父がTwitterで

スターウォーズがつまらないのは、
宇宙の果てまで行っても、親子問題に終始すること。

と、つぶやいたのを観てしまったこと。
そう言われればそうだけど・・・的な、
ファンの方々激怒必死の真理?が邪魔して楽しめませんでした。
未熟でごめんなさい。

ていうか、そもそもこういう映画を楽しめる人間じゃ無いのかな俺は。
色んな意味で何か寂しい気持ちになった。

2016年2月6日土曜日

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』88点



個人的には相当久しぶりのスピルバーグ作品だったが、
相変わらずというか、さすがというか、非常に完成度の高い映画だった。


完成度が高い、と言ってしまえば一言なんだけど、
つまり、欠点がほとんど見当たらない映画というのか鑑賞後の率直な感想。

笑いあり、スリルあり、学びあり、感動あり、最後は泣けるという
「やっぱスピルバーグってすげぇわ!」
という、映画として最高品質の作品になっていると思う。
普通に観た方が良い映画だ。

そしてトムハンクスが素晴らしいことは言うまでも無いのだが、
何よりもソ連側のスパイ ルドルフ・アベルを演じた
マーク・ライランスが圧倒的に素晴らしい。
トムとライランス。この何とも言えない表情が良い。
















じゃあなぜ88点なのかというと、これはもう個人的な好みの問題であって、
自分のような映画素人クソ野郎的には、
「完璧すぎて逆に刺激が無い」という、謎のニヒリズム的感想を持ってしまい、
たぶんスピルバーグはあえてやっているに違いない、
「こんな良いタイミングでこんなこと起きる!?」的なフィクション感に
少し冷めてしまったりした。

でも何度も言うようにこの映画はとても良い映画だし、面白い。
ただデビット・フィンチャー最高芸人としては、
毒不足でキレイすぎる映画に満足できないという・・・

とはいえ、
「なんかスピルバーグにしては小粋なコント的笑いが多いなぁ」
と、思っていたら脚本がコーエン兄弟だったりと、
やっぱり改めて相当質の高い映画であることは間違いないわけで、
笑って、ドキドキして、泣けるこの映画、皆さん是非、ご覧下さい。