圧倒的な緊張感で描かれる新時代の戦争映画。
あっという間の104分。
これは傑作です。絶対に観た方が良いです。絶対に。
これまで個人的に戦争映画のベストは『ゼロ・ダーク・サーティー』(85点)
だったんだけど、しっかりと超えてきた。
内容に関しては貼り付けている予告を見て欲しいんだけど、
この映画が秀逸なのは、
①無人爆撃する側(イギリス&アメリカ合同軍)
②無人爆撃される側(ケニアに潜むテロリスト)
③関係ないのに爆撃攻撃に巻き込まれる一般人
この3つの視点を、どこかに偏ることなく、
完璧な構成とテンポと緊張感を持って、104分の中で描ききっていることだ。
で、さらに映画が秀逸なのは、
この3つの視点をさらに
①イギリス軍諜報機関【現場に指示を出し統率】(ロンドン)
アカデミー賞女優 ヘレン・ミレン 大佐役を演じ、さすがの存在感でした |
②イギリス内閣【攻撃決定権を持っている】(ロンドン首相官邸)
高みの見物と言われても仕方ない構図。 |
③ドローン操縦&ミサイル発射チーム(アメリカ・ネバダ州)
イギリスにいるヘレン・ミレン大佐から「撃ちなさい!」 って命令される辛い仕事を遂行しなければならない2人 手前はドローンを操作する隊員 奥はミサイルのスイッチを押す隊員 |
④映像解析チーム(ハワイ)
※画像見つからず・・・
この人達は一番冷静というか、悪く言うと一番人間味がなかった。
なぜならドローン爆撃した後の惨状を画像チェックして
「はい、死体バラバラですけど、~ってテロリスト死んでます。
顔かたちの特徴から一致致しました。」
って報告するという、どこにやりがいを見いだせば良いのか
全く分からない仕事を遂行するチームだから。
⑤地上部隊(ケニア・ナイロビ)
『キャプテン・フィリップス』でソマリアの海賊として 存在感放ってたバーカッド・アブディ |
スマホでこの虫型カメラを操縦し、テロリストが潜伏する 家の中を覗き見するというハイテク戦争!! 実際にもっと小さい虫型カメラが存在するらしい。 |
上空2万フィートから圧倒的な命中率で爆撃する |
この6つの視点に細分化した上に
ただ、細分化するのではなく、それぞれの立場での
行動・葛藤・苦悩・決断を圧倒的なリアリティーで見せつけてくれる点だ。
名作『ガタカ』の監督が手がけ、似たモチーフの映画に
『ドローン・オブ・ウォー』という良作があるが、
これはイーサン・ホーク演じるドローン爆撃のスイッチを押す軍人が
心を病んでいく様子を「点」で描いたものであった。
一方『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』は、
より多角的に現代の戦争を描ききる。
そしてそこで起きてしまう、人間性を問われる究極の選択。
爆撃しようとしていた最重要テロリスト(2名)が潜伏する家の前で、
(さらに自爆テロ用の大量の爆薬も虫型カメラが発見してしまう)
1人の少女がパンを売り始めてしまう。
しかし、一刻も早く爆撃しなければ、テロリストは逃げてしまうかも知れない。
撃つべきか、撃たないべきか、
1人の少女の命を取るか
テロリストを生かすことで、後々殺戮されてしまう数百人の命を取るか
マイケル・サンデル教授も頭を抱える究極の道徳授業。
お前は命令するだけかもしれねーけど、爆撃のスイッチ押すの俺だぞ!
テロリストを殺すのも俺だし、少女を殺すのも俺なんだぞ!
簡単に押せとか言うんじゃねーよ!!
民間人殺すって分かってて爆撃するの法律違反だろ!
と、憤る爆撃チーム
どっかで見たことあるなと思ったら 『ブレイキング・バッド』のジェシーじゃん! 彼の顔で見せる演技には泣かされた・・・ |
「じゃあ、この後テロが起きて数百人が死んでも良いの!?
法律違反!?どうなの法律担当!」
と、詰め寄る大佐。
この司令部も画面越しで戦争を遂行してるわけで ちなみに奥の男性が法律アドバイザー。 「私の決断は法律的にどうなの!?アウトなの!?」 って詰められるという辛すぎる仕事。 |
そして、
「決定権は内閣にあるのよ!内閣どうなのよ!
早く決めないと逃げちゃうわよ!」
と、大佐に詰められ
様子を見守ってミサイル攻撃の最終決定権を持つ内閣 だけどこの人達、なすりつけ合って全然決めません |
『シン・ゴジラ』ばりの閣僚同士の責任なすりつけ合いコント。
撃つべきか、撃たざるべきか、あなたならどうしますか?
とか言われても困るし、そんな選択肢に迫られる人生、
いくらつまれても送りたくねーよ。
わかってたけど戦争ってとにかく本当に最低最悪だな。
っていう重たい現実をこれでもかと突きつけてくる映画です。
一体どんな結末になるか、是非劇場で確かめてみて下さい。
ただ、デートムービーではありません。
そして映画終盤、
『シン・ゴジラ』ばりの閣僚同士の責任なすりつけ合いコントに
振り回され続けたアラン・リックマン演じるフランク・ベンソン中将が
(この人は軍人の立場として爆撃すべきだという意見)
この人は目の前で閣僚が決めた「撃つ・撃たない」を 電話で大佐に「撃って良いってよ」と伝える役割。 |
爆撃反対派に女性閣僚に「あなた方はズルい。臆病だ。」的なことを
言われて、怒りを抑えながら静かに言い放った言葉が
とても印象的だった。そして格好良かった・・・
と、思ったけど、別にカッコイイとかじゃない。
この人の放った言葉は確かにカッコイイんだけど、
そもそもその「言葉」そのものを発さなければならない
現実、状況は全く格好良くないのだ。
でも、彼はあくまでも軍人としての「仕事」をしているだけであって、
その「仕事」上では、圧倒的に正義で有り、カッコイイし、間違っていない。
みな、それぞれ与えられた役割の中で職務を遂行するプロなのだ。
だけど、そんな職務を遂行した後、そこには達成感など一つも無く、
この映画の中に出てくる登場人物の誰1人、笑っていないのだ。
それが戦争・・・
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