アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞など
計8部門にノミネートされた秀作。
確かに面白かった。
映画の中身より何より驚いたのが、
監督がモルテン・ティルドゥムだってこと。
この人はこのブログでも書いた『ヘッドハンター』という映画で、
ノルウェー史上最高の興行収入をたたき出した鬼才。
ノルウェーのタランティーノ現る! みたいなキャッチがついていた |
まだ3作しか撮ったことないノルウェー映画界期待の新星を
こんな大作に抜擢したプロデューサーのセンスと手腕、
そしてそれにしっかりと応え、良作を完成させたティルドゥム。
初のハリウッド作品とは思えないくらい
ヘッドハンターでも発揮されていた
綿密な脚本と、鮮やかなストーリー展開で、
描きようによっては絶望的な映画にしかならないこのお話を
しっかりエンターテイメント作品、良い意味での大衆的映画に昇華させている。
あまりストーリーに触れてしまうと
興ざめネタバレって感じの映画なので、多くは語らないが、
イギリスの天才暗号解読者アラン・チューリングのお話。
そんなチューリングを演じるのがベネディクト・カンバーバッチ。
「世界で最もセクシーな映画スター」にて1位に選ばれたり、
今世界的に熱狂されている人なんだけど、
何がかっこいいの?って聞かれたらハッキリと応えられない類の男。
これは「イケメン」なのか? |
この男の人気を不動のものにしたのがドラマ『シャーロック』。
やっぱり何度見ても「イケメン」なのか…? |
誰もが一度は脳みそでイメージを作り上げたことがある
一癖も二癖もある世界的名探偵ホームズ役を
「この人ほんとにホームズなんじゃない?」
って思うほどの親和性と独特のニヒル感で演じきった。
で、そんな『シャーロック』を見ている人なら、
天才にありがちな社会不適合者ぶりを発揮するチューリング役への
キャスティングは、何の違和感もなく受け入れられる。
天才ってどうしてこうも変人なんでしょうか。
そしてこの映画が優れていると評価できるポイントは、
鬼才チューリングの半生を小気味よいテンポでコミカルに描いていて、
(映画館では何度も笑い声があがっていた)
それでいてマイケル・サンデルばりの道徳授業が展開され、
その切なく苦しすぎる決断に胸を打たれる…
天才は常に孤独… |
という、映画の究極であるエンターテイメントという観点で切り取った時に
様々な要素で楽しめるという点だ。
泣いてる人もいたし、笑ってる人もたくさんいた。
それは表面的ではあるが映画としての質の高さを証明している事象だ。
ただ個人的に物足りなかったのは
ナチスが誇るエニグマ暗号解読して「よっしゃー!!!!」ってなって、
そこから第2次大戦の様々な局地戦を勝利していくって
一番カタルシス感じれるプロセスをナレーションベースにしている所。
この辺までは順調にカタルシスへの階段を上がっている |
おそらくエニグマ解読に全てを捧げた男の物語だから、
解読後はさほど大切ではないという判断なのか…
勝手にこちらが欲しがったカタルシスだけど、
無いなら無いで文句を言うという勝手な観賞者…
でもこの映画はとても面白いし、良い映画だと思います。
個人的に大好きなキーラナイトレイもとても良い味を出していました。
彼女のベストは何と言っても『ドミノ』ですが。 |
というわけで、誰がいつ観に行っても
「あ~なんだよこれ時間の無駄だった…」
とはならない、お金を払う意味がある良作でした。
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