「意味わかんないだけど」
観賞後、前に座っていたヤングな女性が乾いた声で言い放った。
そんな彼女の背中を綿谷りさばりに、蹴りたい。
っていうのは嘘だけど、
「意味なんてわからなくて良いのだ!この映画は!」
と、背中ごしから言いたい。
でもきっと彼女はこういうだろう。
「じゃあどこが面白いの?」
いや、そもそも2時間近くワンカット長回しでとってるとかあり得ないから!
あの撮影どれだけ大変かわかってんの?
イニャリトゥ監督がすべてのシーンで、
俳優の顔の向き、動作も事前に決めて1発勝負で撮影してんだぞ!
革新的撮影監督エマニュエル・ルベツキ! 『ゼロ・グラビティ』もこの人。 |
「それってスゴいのもしれないけど、話の面白さと関係ないじゃん…」
いや、バカ!
マイケルキートンが落ちぶれたアメコミ俳優っていうパロディから始まり、
随所でアメコミを全力でバカにした感じとか、
映画業界全体、それを批評する批評家にすら全力で中指立ててる感じとか、
エドワード・ノートンが個性派俳優過ぎて成立してない人格破綻者だったり、
ナオミワッツが演技力あるのに全く売れない女優で、しかもレズって設定とか、
名作『マルホランド・ドライブ』のパロディってわかんなかったの?
この人にさえない女優の役やらせて右に出る者いるの? |
「わかんないし…そもそも興味ないし…そもそも結末なにあれ?」
いや、感じろよ!
サブタイトルから感じろよ!
無知が奇跡をもたらしたんだよ!
無知だからこそ彼は真のバードマンになれたんだよ!
あのエマ・ストーンの絶妙な「パパやったわね!」って顔見たらわかんだろ!
パパを全力でディスるシーンも 息を持つかせぬ迫力で最高だった |
「はぁ?結局何が言いたいわけ?あなたとは笑いのツボが…」
いや、こっちこそこの批評性と芸術性と技術が結集された、
まさにアカデミー賞にふさわしい作品を感じられないお前は願い下げだ!
という、
どちら側の人間も、この映画の餌食になっていて、
まさにこの映画そのものである。
だからこの作品の興行収入が、
アカデミー賞・作品賞歴代受賞作の中でワースト2位
(ちなみに1位は『ハート・ロッカー』)であることも
ある意味納得できるわけで、簡単に言えば見る人を選ぶ映画なわけだ。
映画が好きな人は一人で静かに見に行くか、
映画好きの友達と観に行って、熱い映画談議を交わせばいいし、
「映画デートで決めにいくぜ!」という、付き合うには至っていない
女を口説きたい奴は『エイプリルフールズ』とか観に行けばいいし、
というわけで、この92点は自分自身に言い聞かせる92点とします。
個人的には最高に好きな映画で、絶対にDVD買うし、
もう一度観に行って、自分なりに解釈しようと思います。
って言ってる俺かっこいい。的映画の極致。
「この映画を面白いと言える俺カッコいい」
あるいは逆に、
「この映画を認めたら映画をわかってるとは言えない」的映画の極致。
それがバードマン。そしてそいつもバードマン。
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