思ってた以上に最高だった。
巨匠リドリー・スコットが78歳を迎えてまた一つ素晴らしい作品を完成させた。
話としては『ゼロ・グラビティ』的で、
火星探査チームの一人、マッド・デイモン演じるマーク・ワトニーが
任務中の天候不良によって火星に一人取り残される。
・残りの食料は1ヶ月分
・次に宇宙船が火星に来るのは4年後
という『ゼロ・グラビティ』のサンドラ・ブロックも頭を抱える程の絶望的状況。
こんな絶望的状況からどんな展開を予想するだろうか?
普通に考えると
まずテンパって、イラついて、絶望して、少しだけ光が射して、
と思ったらまた絶望して、それでも家族のために・・・
なんてことが渦巻きながら、極限状態の中で人間のありとあらゆる本質が・・・
みたいなドロドロ感満載の高カロリー映画を予想している自分がいた。
ところがどうだ。
映画開始数分で絶望的状況に追い込まれるマッド・デイモンは、
残りの140分弱、火星という地球から数億キロも離れた惑星に
取り残されているにもかかわらず、ずっと“ポジティブ”なのだ。
ポスターに使われているこの顔もよく見たら余裕すら感じる。 |
ジャガイモ作るビニールハウスを完成させて雄叫び! |
劇中に流れる音楽も含めて全てがポジティブ。
一人でカメラ目線で小粋なジョークすら口にし、
絶望的状況を前に、どんなときでも挑戦的、時に挑発すらするのだ。
「火星よ、俺の能力、舐めるなよ!!」と。
TOKIO顔負けのサバイバル能力。なんと火星でジャガイモ繁殖。 |
序盤からあまりにもポジティブすぎて、スリルが足りなさすぎないか?と
見ていて不安だったが、あるところからそのポジティブさが心地よくなってくる。
それはなぜかというと、我々が生きる現実世界においても
当たり前と言えば当たり前なのだが、
絶対的不利な状況、絶望的状況、窮地を打破・打開するのは、
結局“知識”と“アウトプット”と“ポジティブさ”と、
少しの“ユーモア=余裕”なのだ。
彼の専門は植物学者。ていうか宇宙飛行士って能力半端ない。 |
だから、どうひっくり返っても火星で芋作れない俺はまだまだです。
そして、この映画は誰も死なない。
こういう類いの映画で誰も死なないって言うのは、かなり勇気のいる展開で、
フィクションにおける「死」は、良くも悪くもスリルと感情移入を生む。
でも78歳の大先生はそんなものには頼らない。
むしろ一見少し恥ずかしくなるような「仲間」の熱い絆や
自分たちの命の危険を去らしてでも彼を助けると決めた仲間達。 |
現実世界ではあり得そうも無い中国の協力や、
全世界がマッド・デイモンの生還を祈る構図など、
とにかく映画全体がポジティブで前向きに進行する。
で、そのまま気持ち良くフィニッシュするので、とにかく気持ちが良い。
個人的には『ゼロ・ダーク・サーティー』の時と変わらず
常に正しく、冷静でクールなジェシカ・チャステインも最高だった。
世知辛さ満載で、殺伐とした世の中に正面切って全力で逆走する
スーパーポジティブ映画、皆さんも是非劇場で。
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