2014年1月31日観賞。
天才詐欺師とFBI捜査官が手を組む前代未聞のオトリ捜査大作戦、
全米震撼の実話「アブスキャム事件」を映画化した今作。
監督は『世界にひとつのプレイブック(68点)』に続き、
2年連続アカデミー賞候補に挙がったデヴィッド・O・ラッセル。
今年のアカデミー賞ノミネート数は何と10!
作品賞
監督賞:デヴィッド・O・ラッセル
主演男優賞:クリスチャン・ベイル
助演男優賞:ブラッドリー・クーパー
主演女優賞:エイミー・アダムス
助演女優賞:ジェニファー・ローレンス
といった主要部門のほか、
脚本賞、美術賞、衣装デザイン賞、編集賞の10部門。
必然的に観賞前のハードルは上がるわけだが、
流石に10部門ノミネートと言うだけあって、総じて面白かった。
この監督は、やはり脚本とか撮影技術とか云々の前に
役者の能力を最大限に引き出すという力に長けていると思う。
それはプレイブック同様に演技部門賞全てに出演俳優が
ノミネートしていることが証明している。
まず毛を抜いて20キロ増量して見事デブを演じきり、
あの「バットマン」と同一人物とは思えないクリスチャン・ベイル。
この人の役作りには毎回圧倒されるが、(下記画像参照)
役作りだけでなく、その演技力も素晴らしく、
今回も決して幸せとは言えない、
常に何か満たされない天才詐欺師を完璧に演じきった。
この何十分もかけてはげ上がった頭を隠すために
セットしたのに、ブラッドリー・クーパーに
一瞬で崩されて呆然とするシーンには笑った。
そんな具合でもちろんエイミー・アダムスも
ブラッドリー・クーパーも素晴らしかったが、
何よりも炸裂していたのは、
プレイブックで見事主演女優賞を勝ち取った
ジェニファー・ローレンスである。
23歳とは思えない貫禄の演技力で、インパクト抜群。
私生活でもゴールデングローブ賞でエイミーアダムスが
主演女優賞を受賞したと分かった瞬間…
こんな感じになる23歳なんだから、さらに魅力も増す。
褒めてばっかりいても仕方がないが、
ジェニファーロレンスという女優のパワーは凄まじいものがあり、
映画全体の尺で言うと登場回数はさほどないのだが、
観賞後のインパクトで言えばトップレベルに値する。
ここ数年は彼女中心でアカデミー賞は回っていくのではないかと
思わせるほど絶頂期を感じられるほどの迫力だった。
まぁというわけで、今回もローレンスは抜群だったし、
アカデミー賞演技部門全てにノミネートも納得の
俳優陣のクオリティーだった。
ただ点数が傑作である80点に届かない。
それは、前作の『世界にひとつのプレイブック』でも
アカデミー賞8部門にノミネートしながら、
ローレンスの主演女優賞のみにとどまったのと同じく、
今回も10部門ノミネートしているが、受賞は少ない気がするからだ。
なぜか?
もちろん面白かったし、もう一度観ればなお面白くなる類いの
綿密な脚本に見えるような作品なのだが、
同じく実話をベースにした昨年度のアカデミー作品賞を受賞した
『アルゴ』と作品としての質感を比較したときに自ずと感じられる。
この作品はアカデミー賞に値する90点に届くかという秀作だ。
もちろん扱うモチーフは違うし、舞台の規模も違う。
単純に比較することは無意味だし、的外れかもしれない。
が、
あくまでも個人的見解ではあるが、
デヴィッド・O・ラッセルという監督は、
今作のような『世界にひとつのプレイブック』と比べれば
規模、扱う事象が大きく、かつ緊迫感が必要な物語を描くことよりも、
もっと小さなコミュニティーにおける人間関係を描いた方が
より質感の高い作品を完成させる監督なのではないかと思った。
何度も言うが、この作品は面白いのだが、
もっと緊張感と緊迫感で引っ張れるのではないか?
より面白く作れるのではないか?
だが、監督の狙いがそこではなく、
あくまでも事件の中で渦巻く人間関係や感情なのであれば、
この形がベストなのかもしれない。
素人の僕にもちろん正解は分かりませんが、
映画界に置いてどう評価されるかは
今月のアカデミー賞で全て分かるわけで。
でも個人的には、
主演女優賞は『ゼロ・グラビティ』のサンドラにあげたい。