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※素人の戯言なので観賞本数増えるごとに点数は微調しています。悪しからず。

2014年1月30日木曜日

映画『オンリー・ゴッド』75点


2014年1月26日観賞。

2011年のカンヌ国際映画賞監督賞を始め、
各国のあらゆる映画賞を総なめにした『ドライヴ』の
ニコラス・ウィンディング・レフン監督の最新作。


『ドライヴ』は個人的にとても好きな作品で、
80点くらいには値する作品だが、
このニコラス・ウィンディング・レフンという監督は、
とてもやっかいでクセの強い監督である。

ドライヴ』における主演のライアン・ゴズリングは
近年のハリウッドというか、
映画界全体の潮流に逆流するかのように
ほとんど台詞がなく、その表情のみで終始観客を引き込ませる。











「愛してる」だとか「殺すぞ」だとか、
そんな感情を「説明する」台詞がとても陳腐に思えてくるくらいに
ゴズリングの表情、目の動き、体の動きで全ての感情を伝えるという
彼の演技力を極限までに生かす手法をとっていたのが
とても印象的な作品に仕上げていた。
そしてさらにそれらを引き立てる絶妙な音楽と美しい色使い。


さらにその暴力描写には一切の妥協がなく、
ドライヴ』における主演のライアン・ゴズリングが
追っ手のマフィアの頭蓋骨を足で踏み殺すシーンは














映画館で思わず目を背けたくなるほど残虐で、
頭蓋骨が砕ける音まで聞こえてくる圧倒的リアリティーだった。

『ドライヴ』の話ばかりになってしまったが、
そんな二人がまたもタッグを組んだ新作。

さらにR-15となれば、必然的にある程度の残虐性は
覚悟の上、身構えての観賞になる。


そしてそんな期待を見事に裏切らない、レフン×ゴズリングコンビ。
『ドライブ』以上の衝撃とアンチハリウッドの映画に仕上げてきた。
カンヌで賛否両論の嵐も納得できる問題作。






















ストーリーは決して子難しいところはなく、
兄を殺された弟(ゴズリング)の復讐劇である。

これだけ聞けば、
「ゴズリングの壮絶な復讐ショーが始まるんだろう」くらいに
身構えて、「最終的には全員ぶっ殺すんだろうな」何て言う
想定で観賞をスタートさせる観客が大半を占めるだろう。
僕もその一人だった。


だがどうだ。

この映画は終始観客全員置いてけぼり。
この映画に置いて行かれない客の方がイカれてる!
って思いたいほどに置いて行かれる。


まず、登場人物もれなく全ての人間が
人格破綻していて、全く持って感情移入できない。


殺された兄貴も殺されて当然なのだ。
なにせ少女をレイプして殺しちゃうんだから。
そしてその少女の父親に復讐で殺される。
そりゃ殺されるだろうって。

で、その父親に復讐の機会を与えたのが
この映画の「ゴッド」とも言える悪徳タイ人警官。
















こいつがマジで笑えるほど強い。
圧倒的に強い。
「神」がかかり的に強い。
特に笑えるのが佐々木小次郎顔負けの
背中から日本刀を抜いての一太刀!!
















背中から抜くときに、ウソでしょってくらい
「シャキーン!」って効果音が鳴るし、
ウソで背負ってくらいに切れ味抜群。


そんな「神」に復讐を仕掛けるゴズリング
という構図の映画なんだけど、
ゴズリングやゴズリングの母親が送り込んだ刺客も
ことごとくこいつに惨殺される。
R-15も納得というそれはもう「あ~痛い!」って殺され方。

そしてもう一つ笑って良いシーンではないと思うが、
この神悪徳警官は人を容赦なく殺すのだが、
殺した後に必ずカラオケパブみたいなところで
現地語でカラオケを熱唱する。













とにかく無表情で歌う。
それを無表情で見守る悪徳警官の部下達。













最初は何のこっちゃわからなくて、
とりあえずどういう気持ちで見れば良いの?みたいな
置いてけぼり感を食らわされていたんだけど、
必ず人を殺すたびに歌っているので、
禊ぎ?清め?そういう意味で歌ってるのかなとか
勝手に思いつつ、そうかやはりこいつは神なのか?
とか勝手に考えたりしながら見てみたりしたが、
やっぱり正直意味は分からない。


そしてさらに相変わらずというか、
ドライヴ以上に台詞が排除されているから
構成とか展開みたいなものを観客に感じさせず、
唐突とも思える場面転換と、恐ろしいくらいに冗長な1ショットの画で
展開とも言えない転換をこの映画は続ける。

ゴズリングの台詞は恐らく10言くらいしかないんじゃない?
ってくらいゴズリングはしゃべらない。













しゃべらないながらも、ドライヴ顔負けの狂気じみた暴力で
順調に復讐を達成していくゴズリング。
おっ、こりゃ悪徳タイ人警官も倒せるぞ!
なんて少しばかり期待した僕がバカでしたレフン監督。

「俺とやるか?」

と、強気で喧嘩をふっかけたゴズリング。














こんな風にいっちょ前のファイティングポーズをとって、いざ!
















だけど、恐ろしいほどに神は神がかり的に強く…



















ボコボコにやられるゴズリング。
とにかく圧倒的に弱い。
弱いというか警官が強い。

ストーリー主義の脚本に唾を吐きかける
神にあらがうことは出来ないのだ!という
レフンの神髄発揮と言ったところか。


もはやネタバレにもなっている気がするが、
この映画ネタバレもクソもない。
ネタとかバレるとか、そういったストーリー展開みたいな
「映画」の定石を無視した映画であるから。

そして、この映画における、
もう一つの「神」を忘れてはいけない。
それは恐らくゴズリングの「母」である。













この母ちゃんがまたインパクト抜群で、登場早々に
チェックイン時間まで入れませんと言った
ホテルの受付のお姉ちゃんに、
クソ女!とか急に切れる始末。
ここにもさらに一人人格破綻者が現れてしまった…


超破天荒で容赦なく暴力をふるうようなゴズリングも
母親の前では小鳥のように大人しく従順に成り下がる。


ここにも神とそれに抗えない者の構図が見える。
その母親は長男を殺され、もちろん激怒!
ゴズリングに復讐を命じたり、ギャングみたいなガラ悪い奴らに
悪徳警官を襲わせたり、悪徳警官の家族を皆殺しにしようとしたり、
とにかく恐ろしさの本領を発揮し始める。

そしてそんなゴズリングにとっての神と神が対峙した結果…













これ以上書くと本当に全てを書いてしまうことになるので、
「ネタバレなんか存在しないぜ、この映画は!」
とか大手をふるったものの、先入観無しに見て欲しい映画…
という気持ちも少しあるのでこの辺にしておく。

とにもかくにも、レフン監督は今作で、
「現代におけるハリウッド的映画を徹底的に破壊し尽くした」気がする。
ドライヴはある程度の商業的性向も見込んだ上での
自身の主義主張神髄を盛り込んでいたが、今回はそういった
良い意味での妥協が一切見当たらない。
そりゃ観客置いてけぼりになるわ!


というわけで、
ここまでで唯一の「採点不能」とした『ザ・マスター』並に
採点不能感漂う映画ではあるが、
ザ・マスターよりは監督の意図を
何となく自分なりに解釈出来た気がしないでもないので、
この点数にしてみた。

だが、万人に勧める75点ではない。
気楽にハリウッド娯楽映画を観たい人は決して観てはいけない。
バルト9から下るエスカレーターが憂鬱で仕方なくなるだろうから。

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