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※素人の戯言なので観賞本数増えるごとに点数は微調しています。悪しからず。

2020年5月15日金曜日

特別記録 ドラマ『梨泰院クラス』


このブログは個人的な映画日誌だが、
あまりにも語りたくなるドラマだったので特別に記録しておく。

Netflix で話題のドラマ『梨泰院クラス』
最後急にハードボイルドになったのは個人的には好みでは無かったが、
第2話くらいまで耐えると加速度的に面白くなり、終始素晴らしいクオリティだった。

そしてこのドラマを見て改めて、
”優れたエンタメというのは程よくベタ(展開が読める)でいい”
ということを思い知らされた。

我々の暮らすバラエティの世界では、
いかに結末や見所を引っ張って最後まで見せるか」ということに奔走しているが、
ぶっちゃけこのドラマの結末は、第1話を見た時点で
あの人があの人に最後勝つんだろうなあ的に)わかる。誰が見てもわかる。

でも見続けたいと思うその理由は、
ベタありながらも、5回に1回くらいベタを裏切る展開、
そして明瞭な勧善懲悪的構図、
「半沢直樹」と「下町ロケット」と「グランメゾン東京」
を掛け合わせたかのような下克上物語にあるのだが、
このドラマがさらに優れているのは、
そこに学園モノのような”青春”と”恋愛(しかも二重の三角関係)”を織り込んでくるところだ。
なんなら『ワンピース』や『ドラクエ』的な”仲間が増えていく”要素もある。

これは大ヒット海外ドラマに特に顕著だが、
1つの物語の中に4個も5個も同時並行的に物語や事件を展開させるという
非常に優れた脚本の勝利とも言える。

(余談だが全盛期の「24」なんて1分ごとに人が死んでない?
っていうペースだったし、24時間の中で国家的危機(テロ)が五回くらい起きたりしていた。)

これを可能にしているのが、
高校生から35歳くらいまでを1シーズンで描くという、
ある意味ドラマだからこそ可能にしている物語構成だ。

これは正直かなりチャレンジングだし、
実際に違和感や矛盾が生じる可能性も高くなり、
続編に逃げたくなるところを1話70分近くある(15話)
韓国ドラマのシステムをうまく使って描ききっていた。

さらに上手いなと思うのが、その”恋愛”の塩梅が絶妙なところ。

このドラマに男性ファンも多く見られる理由が多分ここで、
いわゆる”恋つづ”的な「あまーーーーい!」の極地のような
キュン死的”恋愛”を描かないので(その辺女性は少し物足りないのかな?)、
見ているこっちは恥ずかしくない。
なんならお母さんと一緒に見ても恥ずかしくない。

かといって、非モテや干物感を笑ったりいじったりすることも皆無で、
「え、こいつ童貞なの?」と信じられないイケメンっぷりである
主人公のパクセロイなのだが
「絶対童貞じゃないじゃん」っていう矛盾を忘れさせるほどの
ピュアなキャラ設定が強固かつリアルすぎて、
フィクションの中に潜む矛盾を探す余計な邪念が機能しなくなるのも素晴らしい。

また、ヒット(バズり)の重要な要因である
”語りたくなる”仕掛けというか展開も多く盛り込まれている。

まず男どもが議論したくなるのが、「イソ派かスア派か?」これに尽きるだろう。
そしてこの世のものとは思えないほどの聖人君子ぶりを終始見せつけてくれる主人公であり、
”男の中の男”として君臨するパクセロイ。

「男であればこうありたい」、「男にはこうあってほしい」
という幻影の権化と化した彼の存在は、
男女共に熱狂的なファンを獲得した大きな要因であろう。


と、関係者でもなんでもないのに
こんなにも語っている時点で梨泰院クラスの大勝利だ。

だけども一つ最後に言いたい。

パクセロイこそ男の中の男だ!」
とか言ってる男には気をつけた方がいい。

そう生きていけていない人こそ、憧れは強まるものだから。

映画『スキャンダル』88点


衝撃の実話。

圧倒的なテンポ感でよくもまあ日本人には馴染みのない背景や物語を
ここまで見せ切れるなという脚本と編集にまず大拍手。

強大な権力を持つ人間に対して、
セクハラ、パワハラ訴訟を起こすときのマニュアルとして完璧な説得力。

しかし弊社はまさかこんなことやってないよな?
と観賞後少しだけ不安になる映画。

映画『リチャード・ジュエル』86点


イーストウッド89歳、さすがの完成度という感じの実話モノ。
彼は最近もっぱら実話にこだわっているようだ。
ってか80超えて自分で監督してる意味がわからない。もはや脅威。

一見気を抜いてみてると「ジュエルかわいそう…」なんて思えるが、
それは"彼が無実"とわかって我々が彼を見てるから。

当時リアルタイムで彼をニュースを通してみていたら、
我々も彼を同じような目で見ていなかったか?
とスクリーン越しにイーストウッド先生が真顔で問いかけてくるかのような迫力があった。

映画『1917 命をかけた伝令』81点


バードマンと違ってワンカット撮影する意味がある"ワンカット風"撮影だった。
これ人死んでない?って思うしかないほどの迫力と
ダイナミックさを兼ね備えた撮影技法はさすがサムメンデス先生。

終始圧倒的緊張感に支配される映像体験は映画館で見る価値あり。
ただ、中盤の赤ちゃんあやすシーンは必要なのかな。

映画『ジョーカー』85点


まずこんなにも暗澹たる気持ちになる作品の監督が
ゴリゴリのコメディ映画クリエイターであるドット・フィリップスであることだ。
(代表作は言わずと知れた『ハングオーバー』シリーズ)

で、肝心の中身だけれど、
120分間退屈しない映画であることは間違いない無いんだけど、
"何が面白いか"と言われると、"面白く"は無い。
もちろんこれを見ていろいろと思うところはあるし、
自分が今生きる日本という国に置き換えた時に…
とか、色々考えさせられながら帰りの電車に乗ることは間違いない。

でもこれを使って現代社会の闇だとかどうかの本気の社会批評し出す人は苦手。

映画『ジョジョ・ラビット』80点


素敵な映画だった。
見て全く損はない。

が、これは本当に好みという問題だと思うが、
やっぱりナチス側を描くなら、彼らの会話が英語での会話だと
シリアスさが失われるし、リアリティも失われる。

ポップかつ子供を通して反戦を描くという点では
斬新かつ素晴らしい作品だと思うが、
突き刺さるものの強さという点で言うと、
個人的にはアカデミー賞での受賞結果が示している気がする。

でも良い映画です。読後感も非常に良いし。

映画『アス』83点


アカデミー賞脚本賞を受賞した
『ゲット・アウト』 の鬼才ジョーダン・ピール監督の監督2作目。

これは個人的には『ゲット・アウト』より面白かった。
2作目でしっかり前回を超えてくる感じが只者ではない。

最初ふざけてるのかと思うほど振り切った設定と演出が
次第にメタファーだと明らかになってくる感じが絶妙に良い。

全て解釈し終えてもう一度観ると景色が変わる映画という意味では
『ゲッド・アウト』に繋がるものがある。

そして何よりも、ホラーでありながらちょいちょい笑えるってのも凄い。
しかも笑わせに行っている笑いではないってのがまた良い。